目次
ここ飯山市は、日本有数の豪雪地。豊富な雪解け水が、ミネラルと養分をたっぷりと含んだ地下水となって田畑を潤し、美味しい農産物を育みます。
なかでも、飯山を代表する野菜といえば、緑色が鮮やかな「グリーンアスパラガス」。
実は、アスパラガスの生産が盛んな長野県の中でも、飯山市が一大産地だということをご存知でしょうか?
目次
90%以上が水分でできているというアスパラガス。
飯山産のアスパラガスは、特に豊富な地下水をたっぷり吸い上げているので、みずみずしく根元まで柔らかいのが特徴。また、昼夜の厳しい寒暖差により、糖度が高く味の濃いアスパラガスに育ちます。
露地栽培が中心となる飯山産のアスパラガスの主な出荷時期は、例年4月中旬から。7月上旬までがピークで、量が少なくなるものの10月まで出荷されています。飯山の地形が南北に長いことから、各エリアで最も美味しい旬の時期が少しずれるため、長い期間アスパラガスを楽しめるのもポイントです。
そこで、今回はエリアの異なるアスパラガス農家さんの違いに着目。それぞれの環境においてどのようにして美味しいアスパラガスが作られているのか、お話をお聞きしました!
▼江口 卓也 さん
飯山市出身。26歳で脱サラし、家業を継ぐ。標高約680m、鍋倉山の麓に位置する「羽広山区」でアスパラガスを3町歩ほど栽培。農業歴13年。
-江口さんの畑はどんな環境ですか?
江口さん:飯山の畑の中でも一番高い所なので日中は23〜24℃、夜は7〜8℃くらい。標高による気温差で虫がつきにくいので、消毒の回数は少ないですね。
そして、冬は8mぐらい雪が積もります。その雪解け水が大地に落ちて、それを吸って吸って吸いまくってアスパラガスが出てくるから、朝4時半くらいに収穫するとアスパラガスの水分で服にシミができるほどびしょ濡れになることもありますよ。
-雪が多いことで大変なことはありますか?
江口さん:雪解けが待ち遠しいよね!南の方で収穫ができはじめる4月中旬頃って、うちはまだたくさん雪があるから。早く収穫時期来ねえかな〜って(笑)
-収穫時期はいつですか?
江口さん:5月後半から7月上旬まで。5月はぴゅ〜んって春ボケしているような感じで出てくるけれど、一斉にガッと力を出してくる6月が最も旬かな。
毎朝4時半から1回刈るようにしていて、1日だいたい1000束=100kgほど収穫するんだけど、ピークの時は1日2500〜3000束ぐらい取れますね。
-マイ道具を見せてください!
江口さん:27cmの印をつけた「鎌」を使っています。出荷基準が26cmなので、下から測って、線よりも超えていればカットしても良い。僕らはだいたい感覚で刈っていますけどね。
-どちらに出荷していますか?
江口さん:JA、中央市場と個人売り。ネット販売はやっていないんですが、県内の新聞店と組んで生協みたいなこともやっています。注文が入ったらうちで荷造りするんですけど、収穫した日のうちにお客さんに届けるっていう流れで、去年は400件近く注文がありました。あとは、市内と関東の飲食店でも取り扱ってもらっていますね。
-アスパラガスへの想いを聞かせてください!
江口さん:従業員で次世代の若者を育てているんですけど、ああいう子達が増えればいいな。アスパラガスじゃなくてもいいんですけど、できればアスパラガスを作ってもらって。
自分が農業の世界に入る時、少し上の世代ですでに農業やっている仲間が多かったから入りやすかったんだよね。後継者や土地問題はあるけれど、美味しいアスパラガスを作り続けて、同じように若い人たちが農業をやりたいと思ってくれたらいいよね。
▼佐藤 有(たもつ) さん
飯山市出身。元JA職員で農業歴40年。標高約330m、飯山駅から約2kmの距離に位置する「大久保区」で8畝(800㎡)ほどのアスパラガスを栽培。JAながのみゆきアスパラガス部会 副部会長を務める。
-佐藤さんの畑はどんな環境ですか?
佐藤さん:元々、千曲川沿いの畑でアスパラガスを作っていたんだけど、2019年の台風19号の被害でダメになってしまったから、草畑だったこの場所を開墾したんだ。いま実際に植えながら、アスパラガスを栽培する上で重要な土づくりを同時にしているんだよ。今の畑は粘土が入っているから養分を蓄えやすくて、今年まだ3年目だけど、約1ヶ月でもう1000束取れたから上出来だ。
-アスパラガスは土づくりが重要なんですね
佐藤さん:一度植えたら10年くらいその畑で成長して、最短3年目から毎年収穫することができるんだけど、そのためには健全な根が張っていないといけない。
俺は、発酵堆肥と有機肥料を使うことで土を改良して育てているんだけど、雨が降った時に土が跳ね返って病気になることが多いから、土を柔らかくして跳ね返りを少なくしているんだ。スポンジみたいにね。いつもいろいろ挑戦してみては、アスパガスラ部会の中で構成する「土づくりの研究会」のみんなと話し合っているんだよ。
-収穫時期はいつですか?
佐藤さん:例年4月中旬から5月下旬くらい。朝はだいたい6時から作業して、午後は14時か15時頃にもう一度収穫する。標高の高い地域と比べれば気温が高くなりやすいから、1日2回取らないといけないんだ。
-マイ道具を見せてください!
佐藤さん:俺は鎌を使わず、ハサミと30cmの印がついた棒。鎌で刈るよりも断面積が小さくなるから水分の出る量を抑えることができるんだよね。
そして、切ったところから病気になりやすいから、30cmを基準に土の中にある根元から切る。収穫するにはいちいちしゃがまないといけないから大変だけど、色々と試行錯誤をした結果、このスタイルになったんだ。
-どちらに出荷していますか?
佐藤さん:一時期、直売所に出しているときもあったけど、今はJAだけかな。
-アスパラガスへの想いを聞かせてください!
佐藤さん:高齢化でアスパラガスの生産量が減ってきているけど、もう一度 飯山のアスパラガスを盛り上げよう!と、そういう気持ち。そのためにもアスパラガス栽培を続けていける仲間をもっとつくりたい。年したら年したなりきで知恵を出して、みんなでわけしょ(若者)を育てていかないといけねぇよな。
・アスパラガスに品種ってあるの?
りんごに「紅玉」や「シナノスイート」などと種類があるように、実はグリーンアスパラガスの中にもたくさんの種類があるのをご存知でしょうか。
・ウェルカム系統
・全雄ガリバー
・ドットデルチェ
・メリーワシントン
・グリーンタワー など
土地によって適した種類が異なるようですが、基本的には見た目も味も一緒。「太いのがたくさん出る」のか、少し細くなったとしても「量がたくさん取れる」か、という傾向の違いだけで、農家さんがスーパーで売ってるものを見ても、品種までは判断できないようです。
・アスパラガスの寿命は約10年?
アスパラガスは一つの株から10年以上収穫できますが、連作障害が起きやすい作物。同じ畑で新たに株を植えるには10年空ける、もしくは別の土地を見つけて耕し始めないといけません。長期栽培の計画が必要なので作り続けていくには、土地のローテーションが大変……!
・美味しいアスパラガスの見分け方は?
まずは根元に注目!切断された下の部分が、乾いていないものを選びましょう。乾いてくると白くなるので、白色が薄く、そして緑色が強いものがおすすめ。また、穂先がキュッとしている方が旬の証。旬をすぎると、穂先がホワっと開いてくるそうで、比べて見ると一目瞭然なんだとか。ちなみに、農家さんたちは穂先が開くことを「ほけてくる」と言うそうですよ。
農家さんが丹精込めて育てた、美味しいアスパラガスをぜひ多くの人に味わっていただきたい……!ということで最後に、旬のアスパラガスを楽しみ尽くす飯山旅をご提案します!
①飯山でアスパラガス料理を楽しむ
長野県では「北信州おいしい食材フェア2023」を実施中。アスパラガスも対象の食材になっているので、市内の飲食店でもアスパラガスを楽しむことができます。各店による多彩なメニューでアスパラガスを堪能しましょう。参加店舗はこちらから
②アスパラガスのお土産は直売所で
シーズンになると、市内の直売所には朝採れの新鮮なアスパラガスがズラリ!焼くもよし、茹でてもよし、揚げてもよしなので、ご家庭の食卓でもぜひお楽しみくださいね。
③アスパラガスグッズを見つけよう
飯山にはアスパラガスをPRするお菓子やグッズもあるんです。なかでもおすすめは、老舗洋菓子店「サン、ローラン」による「アスパラくん」。なんと、色合いと香りが残るよう、粉末にしたアスパラガスを生地に練り込んだという焼き菓子(!)なんです。ぜひ一度お試しあれ〜!
④ショッピングサイトでお取り寄せ
※2023年は、残念ながら飯山謹製堂での取扱予定はございません。
飯山産アスパラガスの美味しさが忘れられない……そんなあなたに!道の駅「花の駅 千曲川」が運営するショッピングサイト「飯山謹製堂」では、飯山産のアスパラガスをお取り寄せすることができますよ。贈答用にもおすすめです!
春から秋まで、長く楽しめる飯山のアスパラガス。一口食べれば、口いっぱいに広がるジューシーな甘みにきっと驚くはず。ぜひ一度味わってみてくださいね。
では、みなさんよい週末を!
執筆:くわはらえりこ
撮影:太田 孝則
記事公開日:2022年6月27日
記事更新日:2023年5月2日